剣道具屋をやっている中で剣士や剣士のお母さんから「剣道衣ってどうやって洗うの?」というご相談をよくいただくことがあります。剣道をやっていると汗、ニオイ問題はつきものです。特に剣道衣に関しては、袴や防具より肌と密着し、更に上から胴を着けることで汗を直接吸っているので日々の稽古においてお洗濯がとても重要になります。それなのに、ネットで「剣道 洗濯」と検索してみても出てくるのは袴の洗濯方法ばかりで剣道衣についてはあまり書かれていないように感じます。

「剣道衣って服と同じように洗えばいいんじゃないの?」そう思う方もいるかもしれませんが、絶対にやめてください!洗い方ひとつで高い金額を払って買った剣道衣が傷んでしまうだけでなく、色が落ちて使い物にならなくなったり、洗濯機の中までも大変な事態にさせてしまいます!今回は剣士の方や剣士のお母さんたちが剣道衣をより長く大切に使っていけるよう、剣道衣の洗濯方法やお手入れについてまとめてみました。

剣道衣の素材を知ろう!                               

お洗濯の話の前に、まずは剣道衣の素材にはどんなものがあるのか、それぞれのメリットとデメリットを簡単にご説明します。素材によって洗濯方法やお手入れが少し変わってくるので素材を知ることはとても重要です。

藍染の剣道

ザ・昔ながら!の剣道衣です。着たり触ったりすると肌に『藍』がつくのが特徴です。

「肌につくのに、どうしてわざわざ藍を使うの?」

それは藍染の『藍』にさまざまな驚きの効果があるからです!

  • 汗の酸化に強く、生地を丈夫にし長持ちさせる効果
  • 抗菌性があり、あせもやただれを防ぐ効果
  • 消臭効果があり、汗臭さを抑える効果

また、見た目にも重圧感があり『格好いい!』ので剣道高段者の方ほど藍染の剣道衣を好んで使用している傾向にあります。デメリットはとしては扱いにくさや藍が肌につくこと、お洗濯の難しさでしょう。

■藍染ではない綿の剣道衣                                  

藍ではなく化学染料で染められた剣道衣です。

見た目は藍染に近く、ほとんど色落ちしないのでお洗濯は藍染より簡単です。

デメリットは藍染特有の『風合い』がないところで、あくまで『藍染風』という言葉がぴったりです。

■ジャージ剣道衣

ポリエステルを素材としている剣道衣で、よく学生のスポーツウェアで使用されるような素材をイメージしていただけたらわかりやすいと思います。現在剣道具店ではさまざまな種類のジャージ剣道衣が販売されていますが、当店で販売しているジャージ剣道衣は学生のスポーツウェアをもっと軽く薄くしたようなイメージのものです。ジャージ剣道衣は機能性と使い勝手が抜群で多くのメリットがあります。

  • 通気性がよく、汗をかいてもサラサラしている
  • 薄手なので稽古中の体の熱を外にだしてくれる
  • 色落ちもほぼなく、洗濯機で手軽に洗える
  • 速乾性があり、干したらすぐに乾く(夏場の外干しであれば1時間程度で乾くものも!)

デメリットとしては見た目が見劣りするので試合や審査には向かない点です。試合や段審査でジャージ剣道衣の方はあまり見かけませんので、あくまで稽古用として使用することをおすすめします。

洗うタイミングは?

最初にお話ししたように、剣道衣は肌と密着して使うので汗をよく吸っています。洗濯頻度は個人個人の好みもありますが洗濯のしすぎも逆に剣道衣の生地を傷めてしまう原因となります。剣道具屋からの意見としては毎回の洗濯は必要ないと考えています。

  • 汗をあまりかかなかった日はハンガーにかけて干しておくのみにする
  • 汗をかいた・「むむ?なんかクサイ…?」と思ったらお洗濯
  • 目安としては最低1週間に1回はお洗濯

といったところでしょうか。このあとに詳しく説明しますがジャージ剣道衣は普通の服のように手軽に洗えますので、夏場や部活動などで毎日汗をかく人は稽古用にジャージ剣道衣を使用すると便利です。

洗う時に洗剤は使っていいの?

これは剣道衣の種類によって違ってくるので注意が必要です。また、使える洗剤と使えない洗剤があるので使用する場合は成分をよく見て使ってください。

■藍染の剣道衣の場合

色落ちして使い物にならなくなってしまうので洗剤は絶対に使わないでください!先ほどお話ししたように藍染には消臭・抗菌効果があるので、きちんとお手入れしていれば水洗いのみでニオイが取れないということはありません。

それでも気になるようであれば藍染専用の洗剤もネットなどで購入できます。

■藍染ではない綿の剣道衣・ジャージ剣道衣の場合

洗剤を使用できますがこれらの剣道衣も(特に最初に洗う時には)多少の色落ちがあるので、蛍光増白剤の入っていないもので成分が中性のもの(中性と弱アルカリ性があります)、おしゃれ着用洗剤などがおすすめです。代表的なものとしては『トップ NANOX』『花王 エマール』などがあります。

具体的な洗い方をご紹介!

藍染の剣道衣の洗い方

1.たらいや衣装ケースに水、もしくはぬるま湯を張る。

(無ければ大きめのゴミ袋でも代用できます!)

2.剣道衣を浸して押し洗い。

浸す時間が長いと色落ちが進むので2~3回程度で済ませるのがポイント。

(藍が出ますのでゴム手袋の着用がオススメ)

3.水を捨て、手で軽く絞って裏返して陰干し。

(洗濯機で軽く脱水も可能ですが、画像のたらいを見てわかるように洗濯槽に藍がつく可能性があります)

藍染ではない綿の剣道衣の洗い方

1.畳んで洗濯ネットに入れ、洗濯機の『手洗いモード』で洗う。

2.脱水をかけ、シワをしっかり伸ばして裏返して陰干し。

ジャージ剣道衣の洗い方

1.畳んで洗濯ネットに入れ、洗濯機で洗う。

2.脱水をかけ、シワをしっかり伸ばして裏返して陰干し。

藍染ではない剣道衣ジャージ剣道衣のみ洗剤を使用できますが、使用する場合は前の【洗う時に洗剤は使っていいの?】の説明の通り洗剤の成分をよく確かめてから使用してください。また、購入してすぐの新しいものは藍染でなくても最初だけ色落ちするものもあります。他の物と一緒に洗わないでください。

洗った剣道衣の干し方

剣道着はどの種類であっても日光に当てると色が変色してしまいます。干す際は必ず裏返し陰干ししてください。

普段使用している衣類ハンガーにかけることもできますが生地が重たく、特に袖部分が大きく乾きにくいので当店でも販売しているような剣道衣専用のハンガーを利用すると良いと思います。干すスペースに余裕があれば物干し竿に直接袖を通して干す方法もありますよ。

実はお洗濯より普段のお手入れが大事です!

洗うタイミングについてでもお話ししましたが、剣道衣は洗濯のしすぎも傷みの原因になるのでお洗濯は必要最低限にすることが重要です。『無駄に洗わない』ということです。その分、普段のお手入れも大切になります。決して安くはないものですから買い替えなんて気軽にできませんよね。そんな点からも、やはり日々の正しい使い方やお手入れの知識を知っておくといいと思います。

■洗濯しない日は湿った状態で放置しないことがポイント

洗濯をしない時、できない時には必ず乾くまでハンガーなどにかけて干しておいてください。すぐに干せる環境がない場合も、脱いだ後に乾いたタオルなどで軽く水分を取るだけでも違います!帰宅後はなるべく早く干して乾かすことを心掛けましょう。

■ニオイ対策グッズの活用

洗濯しない時に消臭・除菌ができるスプレーなどを利用するのも手です。市販のファ〇リーズなどといったものは元々嫌なニオイを変える目的で香りがついています。日常生活程度のニオイは消してくれますが、剣道の時に発生するニオイには逆効果!その良い香りが剣道臭に負けてしまい、『クサイ』と『良い香り』が混ざったとんでもないニオイを作り上げます(笑)当店でも販売しているような剣道専用の消臭・除菌スプレーが最近はネットや剣道具店でたくさん売られています。そういったものは余計な香り成分が入っていないので素直にニオイを消してくれるのでおすすめです。

※スプレーを使用する際はまずは目立たない場所で変色など発生しないか確認し、スプレーした後はすぐに干してしっかり乾かしましょう。

剣道用消臭・除菌スプレー『deo(デオ)』

■同じものをずっと使用せず何着か使い分ける

剣道衣には素材によってメリット・デメリットがあります。同じものを繰り返し使って使用頻度が増えると当然傷みも早いです。練習時には洗いやすいジャージ剣道衣を、試合の時には見た目の良い藍染素材の剣道衣をと使い分けるのもひとつです。練習と試合とで着心地が違うのが気になってしまう方は藍染ではない綿の剣道衣を2着用意して使い回す方法もあります。自分に合った方法で使い分けるだけでも剣道衣の傷みを減らすことができます。

まとめ

一生懸命稽古をして汗が染みこんだ剣道衣は、まさにアナタの頑張った証です。でも、剣道はカラダだけでなく心も鍛錬するもの。汗やニオイ、汚れが気になってしまっては稽古にも気合が入りませんよね。ぜひ今回ご紹介した方法を参考にしてお洗濯はもちろんのこと、マメにお手入れしたり、それぞれの剣道衣の特徴をうまく活かして使い分けたりして日々の剣道を存分に楽しみましょう!